浅い夢何度も自分に言い聞かせた。断ち切るためあの家を出、山に篭り自らに厳しい鍛錬を課した。『敵』として向かい合えるように 躊躇することなくこの引金を引けるように そのはずだった。なのに・・・。 お前がその髪を燃え盛る炎のように翻し、まっすぐ挑むように俺を見据えた時、俺は俺の敗北を悟った。 ああそうだ。いつだってそうだった。お前なら俺を倒すのに刃物も機銃も必要ない。 2階の角部屋の明かりが消えた。お前は何を夢見るのか・・。 そして俺も目を閉じる。束の間の安らぎと餓えた心を抱きつつ・・。 「やらなきゃいけないことより今は君と手をつないでいたい」 どこかで聴いた歌を思い出しながら、俺も、と願う。 せめてこの浅い夢の中だけでいいから・・・と。 |